尾を食む蛇のゆくえ

 あなたたち並んでいたら本当の兄弟みたいよだなんてそんなこと言われなくてもわかっていた。俺とあいつはあまりにも似すぎている。俺はそれが嫌であいつを兄だと言った事が無くてそれでも俺の神取の血は年々俺の姿をあいつに近付けていくわけだ。
 ある日あいつは気紛れに俺を強姦しながら俺の髪を鋏でばさばさと切っていった。すっかりショートヘアーとなった俺にあいつは益々興奮し何度も直腸に射精し俺は吐きそうだった。最後に少しだけ残っていたプライドが見事にずたぼろにされてしまった気分だった。
 バスルームの鏡はあいつによく似た誰かの泣き出しそうな間抜け面を映していた。(これは俺じゃない)鏡の中で誰かがぼろぼろ泣き始めたのを俺はじっと見ていた。あいつが泣いているようだと思った。

「俺は誰だ」

 前髪で古傷が隠れてしまった俺(だと推測される誰か)は俺たる確固としたアイデンティティを喪失してしまった。たかだか髪を切られた位で俺はあいつに似すぎてしまったせいで俺の存在は揺らぐのだ。俺は居なくてもいいのかもしれない。
 俺があいつの服を着て街を出歩いたとして、一体何人の人間が俺を城戸レイジとして認識するのだろう。きっと誰も気付かない。もしかするとあいつが知っていて俺が知らないような人間が能天気に「こんにちは」などと声を掛けてくるかもしれない。そして俺はショーウインドウに反射した俺の姿を見て吐き気を催すのだ。

 あいつはまた俺を自分に見立てて強姦するのだろう。最近ようやく伸びてきた髪も切られてしまうかもしれない。そうしたら俺はどうすればいい。あいつとそっくりな俺は。

 あいつと俺の境界線が溶けて無くなってゆく。