「ようするにお前は役立たずだ」
(使用後のコンドームあるいは自慰後の処理に使ったティッシュペーパーあるいは使用済み生理用品あるいは、ああ一々上げていたらきりがない。兎に角お前はそういう類いの物と同じなのだよ。)
すると俺は一体何という存在だというのだろうか。安易に記号化されてしまった俺には行く宛が見つからない。
ペシミズムに溺れるのが好きだ。つまり自身の人生を懐古し哀れに思うのが好きだった。悔しい事に神取もそれを愛している。所詮は俺も神取の血を引いた賎しい人間だったということなのだろう。嫌だとか思うことすらしなくなったのはいつの頃からか忘れてしまった。面倒だったのだ。
殺さなければならないと思っていた。殺すのは神取でもなく他の誰でもなく、勝手に俺の脳味噌の隅ッこに住み着いた神取の影だ。あいつはたちが悪い。そのくせ俺の中から出ていこうとしない。頭蓋に納まったきたねえ豆腐を1ccたりとも残さず抉ったとしてもあいつはきっと出ていかない。カラカラになった頭蓋の中で悠々自適に暮らすだろう。じくじくと額の傷が傷んだ。このまま傷口が開いてしまったら俺はどうなるのだろう。
「なあ神取、死んでくれよ」
「なぜ」
「そうしたら楽になれると思う」
いつしか俺は馬鹿みたいに成長した神取の影に全てを持っていかれてしまうのだろう。他人に興味がないように振舞い厭世的な自身に心酔し惨めに死んでいくのだ。そう決まっている。
何もかもが嫌だと思う。『ようするに役立たず』なのだ。俺は纏めてゴミ箱に棄てられるようなちっぽけな男だった。そして勝手に増えてゆく。城戸玲司という人間は、本当はもうどこかに行ってしまったかもしれない。
「可哀想なレイジ」
「きっとあんたよりマシだぜ」
「ならお前は世界で二番目に可哀想だ」
「自分が一番可哀想だとでも」
「私は役立たずにすらなれない」
つまり私は使用後のコンドームあるいは自慰後の処理に使ったティッシュペーパーあるいは使用済み生理用品にすらなれないのさ。私の価値とはなんだ。何だった?
あああと唸ってから神取は泥のように眠ってしまった。俺の脳味噌の中に住み着く神取は暗い暗い場所で膝を抱えたままだ。
俺が抱えた物はでかすぎた。今日は良い夢が見られるだろうか。額の痛みより神取より、俺にはそれが心配でたまらなかったのだ。